この記事ではプロジェクトマネージャ試験のオススメ参考書について、受験者のレベル別にご紹介します。また、なぜレベル別にオススメ参考書が異なるかや、なぜそのレベルの人にその参考書をオススメするのかもご説明します。
応用情報技術者は持ってるんだけど、プロジェクトマネージャ試験でどの参考書を使えば良いのかわからない・・・PMBOKから勉強するのがいいのかな?
プロジェクトマネージャ試験を受ける人のレベルは様々です。その人の資格やプロジェクトマネージャとしての実務経験を聞いてみると、「応用情報は持っているけれど、プロジェクトマネージャの実務経験はない」や「IPAの試験を受けたことはないけれど、PMP資格は持っているしプロジェクトマネージャの実務経験は豊富」などです。ここで「実際に自分のレベル的にはどんな勉強をすればいいの?」がわからなくて困っている人は多いです。
結論は、必須がみよちゃん本こと翔泳社の「情報処理教科書 プロジェクトマネージャ」の最新年度版です。人によっては追加で「情報処理教科書 高度試験午後II論述 春期・秋期」と「情報処理教科書 高度試験午後I記述 春期・秋期」もあると良いです。
私は都内の上場IT企業で、プロジェクトマネージャ試験対策の社内勉強会を2016年から主催しています。参考書の相談を受けた際には、受験者のレベルを診断した上でオススメの参考書を紹介しています。この理由は、受験生のレベル次第で最適な勉強方法が違うからです。
自分のレベルを知ることで最適な参考書に出会えるようになり、合格レベルまで最短距離で到達できるようになります。
必須はみよちゃん本。レベルが低い人は三好先生の午後Ⅱ対策本と午後Ⅰ対策本の追加をオススメ
受験者のレベルを3段階に分けて、それぞれのレベルの人にオススメの参考書をまとめました。客観性を高くするために、別の資格(PMPやIPA情報処理技術者試験)を持っているどうかを、レベルの判定基準にしています。
受験者のレベル | 別の試験の合格状況 | オススメの参考書 |
---|---|---|
レベル1 | ・PMP資格の合格者 もしくは ・応用情報以下の試験の合格者 もしくは ・どちらの資格も未合格者 | 1冊目:情報処理教科書 プロジェクトマネージャ(必須) 2冊目:情報処理教科書 高度試験午後I記述 春期・秋期 3冊目:情報処理教科書 高度試験午後II論述 春期・秋期 |
レベル2 | ・高度試験(非論述系)の合格者 かつ ・高度試験(論述系)の未合格者 | 1冊目:情報処理教科書 プロジェクトマネージャ(必須) 2冊目:情報処理教科書 高度試験午後II論述 春期・秋期 |
レベル3 | ・高度試験(論述系)の合格者 | 1冊目:情報処理教科書 プロジェクトマネージャ(必須) |
実は、プロジェクトマネージャとしての実務経験のありなしは気にしなくてOKです。スタート時点では不利ですが、勉強を進めていれば自然と追いつく程度の差だからです。試験合格への影響は小さいです。
受験者のレベル別にオススメ参考書が変わる理由
オススメ参考書が変わる(レベルが低いほど多い)理由は、他の試験の合格状態によって、既にマスターしている知識と解法が変わってくるからです。例えば、レベル2である高度試験(非論述系)の合格者は午後Ⅰ記述の問題文や設問の読み方はマスターしていますが、午後Ⅱ論文の作成の方法はわかっていません。従って、午後Ⅱ論文の作り方(例 問題文の論点に沿った章・節・項立て)は勉強する必要があります。
マスターしている知識と解法が違うため、合格に向けて優先的に納めるべき知識と解法も違う、ということです。
プロジェクトマネージャ試験に必要なものは?
合格に必要なものはプロジェクトマネージャ試験用のPMBOK知識と解法です。さらに解法を3つの受験者レベル別に分解すると、①午後Ⅰ解法 ②午後Ⅱ解法 ③PM試験アジャスト となります。
解法とは、セオリーのことだと捉えてください。午後Ⅰ記述であれば「品質管理ができていないと問題文に書かれていたら、品質管理の改善が関連してくる可能性が非常に高い」というようなセオリーです。解法は大きなテーマなので別の記事でまとめます。
プロジェクトマネージャ試験の合格までには3つの壁がある
前述の通り、プロジェクトマネージャ試験には試験用の解法が3つあります。3つの解法の習得が、プロジェクトマネージャ試験合格に至るまでの壁です。解法をどこまで抑えているかによって、当然、対策が異なります。
例えるなら「賢者になるには魔法使いと僧侶がLv20になる必要があるけれど、僧侶レベル1の人と、僧侶レベル10の人と、既に僧侶レベル20かつ魔法使いはレベル10の人、ではやることが当然違うよね」という話です。ドラクエがわかりにくかったら「1年生にはまず足し算を教えるし、足し算を理解している前提で、2年生には掛け算を教えますよね」という話です。
具体的には、
- レベル1の人(PMP保持者・応用情報以下の合格者・どちらも未合格者) ①午後Ⅰ解法 ②午後Ⅱ解法 ③PM試験アジャストの3つの壁を超える必要がある。
- レベル2(高度試験(非論述系のみ)の合格者)の人は②午後Ⅱ解法 ③PM試験アジャストの2つの壁を超える必要がある。
- レベル3(高度試験(論述系)の合格者)の人は③PM試験アジャストの壁を超える必要がある。
ということです。
実際は、3つの壁は段階的に超えていくものではなく、最終的に全てを超えることがゴールという感じです。試験前日に全ての壁を一度に超えることもあります。
それぞれのレベルの人にオススメの参考書とオススメする理由
レベル1の人とは?
レベル1の人の定義は、IPAの試験区分でいうと応用情報の合格以下の人です。具体的な例としては以下のような人です。
- 応用情報(もしくは基本情報やITパスポート、セキュリティマネジメント試験)に合格している
- PMPは持っているけれど、IPAの情報処理試験は一つも合格していない
PMPを取得している人もここに位置付けています。理由は、PMP取得者でも午後Ⅰ解法を身につける必要があるためです。PMPを持っている人はPMBOK知識面では圧倒的に有利です。しかし午後Ⅰ記述のような問題はPMPでは出てこないので、解法は体得できていません。
レベル1の人にとっての最初の壁は?
レベル1の人にとって、最初の壁は午後Ⅰ記述問題です。
ここで、プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅰ記述の特徴をざっくり書くと、以下の5つとなります。
- 問題文として、5ページ(5,000文字くらい)に渡るプロジェクトの状況を読む
- 設問として、そのプロジェクトの問題点や対策、その対策を選択する理由を30字などで答える
- 2のような設問が6問~8問ほど用意されている
- 1から3までのワンセットを1つの大問として、合計2つの大問を解く
- 大問2つを合計の制限時間90分で解く。つまり1から3までのワンセット1つにつき、45分しかない
午後Ⅰ記述の回答は、最初は何を答えても正解になってしまうように感じるかもしれません。IPAが公開している正解を見ても「私が書いた答えも正解のはず!誰か採点してほしい!!」と思ってしまうものです。正直、実務だったら対策案は多数あるでしょう。しかし、試験では出題者が散りばめた問題文中のヒントを読み取って、ヒントを取り入れた回答をする必要があります。ヒントを取り入れた回答の導き方が午後Ⅰの解法です。この午後Ⅰの解法をマスターするために大きな壁が立ちはだかります。
壁にぶつかる例として、問題を1つ紹介します。
この問題は、CSWG(という社内ワーキンググループ、という問題文の設定)の目標を、問題文から見つけ出してこないと解けません。具体的には、下線④の2ページ前に「L社経営層は、CSが高評価の顧客よる購入体験に基づく顧客コミュニティでの発言が売上げ向上につながっているとの分析から、高評価の割合を80%以上とすることをCSWGの目標にした。」という一文があり、ここを解答に使います。
出題側は、この一文が重要であるというヒントを2つ添えています。それは「L社経営層は」と「80%」です。一般的に、経営層からのリクエストや具体的な数字はプロジェクトにおける重要な要素です。そこで、出題側はわざわざ「L社経営層は」と「80%」という書き方をして、「ここがヒントですよ!マークすべきですよ!解答に使うんですよ!」と表現しているのです。
こんな感じで午後Ⅰ記述の超重要な解法として「問題文のヒントの読み取り」があります。出題者による「ここがヒントですよ!マークすべきですよ!解答に使うんですよ!」を問題文から読みとることが解法なのです。
なぜ出題側はこんな形でヒントを出しているのでしょうか?この理由は一言でいうと「正答には、正答であるための明確な根拠が必要だから」なのですが、このあたりはまた別の記事にします。
午前Ⅰと午前Ⅱも壁ではないの?
レベル1の人は知識問題である選択式の午前Ⅰや午前Ⅱも突破しなければならないです。しかし正直なところ、午前Ⅰと午前Ⅱは大して難しくない上に最適な勉強方法も確立されているため、午前Ⅰと午前Ⅱは壁として定義していません。勉強時間はほぼ午後Ⅰと午後Ⅱに費やしておき、直前1週前くらいから午前Ⅰと午前Ⅱ向けに過去問の頻出部分をやれば突破できます。
午前Ⅰと午前Ⅱの勉強方法は別の記事で書きます。
レベル1の人にこの3冊の参考書をオススメする理由は?
①情報処理教科書 プロジェクトマネージャ
- プロジェクトマネージャ試験必携の本。どんなレベルの人も必ず買うべき
- 詳細な理由はこちらの記事をご覧ください
②情報処理教科書 高度試験午後I記述 春期・秋期
- 午後Ⅰ記述の解法を得るために効率的だからです。
- ①の「情報処理教科書 プロジェクトマネージャ」だけで合格する人もいます。私が見てきた経験上、3割くらいの人は「情報処理教科書 プロジェクトマネージャ」だけで合格しています。
- 買うかどうかの判断記述としては、とりあえず情報処理教科書 プロジェクトマネージャの午後Ⅰの解説を読んでみて、「全くピンと来ない。解法をマスターできる気がしない」となった人は買うと良いです。
- この参考書の詳細はいつか書きます
③情報処理教科書 高度試験午後II論述 春期・秋期
- 午後Ⅱ論述の解法を得るために効率的だからです。
- こちらも②で書いた通り、3割くらいの人は「情報処理教科書 プロジェクトマネージャ」だけで合格しています。
- 買うかどうかの判断記述としては、とりあえず情報処理教科書 プロジェクトマネージャの午後Ⅱの論文サンプルを読んでみて、「5時間かけても似たようなレベルで論文を全く書ける気がしない(本番は2時間)」となった人は買うと良いです。
- この参考書の詳細はいつか書きます
レベル2の人とは?
レベル2の人の定義は、IPAの高度試験の技術系試験に既に合格している人です。具体的な例としては以下のような人です。
- ネットワークスペシャリスト試験に合格しているけれど、ITストラテジスト試験には合格していない
- データベーススペシャリスト試験に合格しているけれど、システムアーキテクト試験には合格していない
レベル2の人にとっての最初の壁は?
レベル2の人にとって、最初の壁は午後Ⅱ論述問題です。この理由は言わずもがなですが、2時間で出題の意図に沿った2000字超の文章を書くのは、対策なしでは不可能です。午後Ⅱ用の解法のマスターと相応の準備が必要です。
前述したIPAの技術系高度試験の午後Ⅰ記述と午後Ⅱ記述問題は、本質的にはプロジェクトマネージャ試験の午後Ⅰ記述と同じような解法を使って長文を読んでいくものです。そのため技術系高度試験の合格者にとっては、プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅰ記述は経験済みであり、未経験となる論文試験が壁になります。
壁にぶつかる例として、問題を1つ紹介します。
この問題で回答に含める必要があることは、以下の8点です(多いですが。。。)。
- 設問イでは、①進捗の予実差異 ②遅れと判断した根拠 ③遅れの原因 ④原因に対する再発防止策 ⑤遅れへのばん回策を書く必要があります。
- 設問ウでは、イで述べたの再発防止策と遅れへのばん回策 における⑥実施状況 ⑦評価 ⑧今後の改善点を書かなければなりません。
これら8点を事前の準備無しで本番の2時間以内に書き切ることは、99%の人には不可能です。
レベル2の人にこの2冊の参考書をオススメする理由は?
①情報処理教科書 プロジェクトマネージャ
- プロジェクトマネージャ試験必携の本。どんなレベルの人も必ず買うべき
- 詳細な理由はこちらの記事をご覧ください
②情報処理教科書 高度試験午後II論述 春期・秋期
- 午後Ⅱ論述の解法を得るために効率的だからです。
- ①の「情報処理教科書 プロジェクトマネージャ」だけで合格する人もいます。私が見てきた経験上、3割くらいの人は「情報処理教科書 プロジェクトマネージャ」だけで合格しています。
- 買うかどうかの判断記述としては、とりあえず情報処理教科書 プロジェクトマネージャの午後Ⅱの論文サンプルを読んでみて、「5時間かけても似たようなレベルで論文を全く書ける気がしない(本番は2時間)」となった人は買うと良いです。
- この参考書の詳細はいつか書きます
レベル3の人とは?
レベル3の人の定義は、IPAの高度試験の論述系試験に既に合格している人です。具体的な例としては以下のような人です。
- ITストラテジスト試験に合格しているが、ネットワークスペシャリスト試験に合格していない
- システムアーキテクト試験に合格しているが、PMPは取得していない
レベル3の人にとっての壁は?
レベル3の人にとっての壁は、プロジェクトマネージャ試験への思考方法のアジャストです。この理由は、プロジェクトマネージャ試験用の解法や(IPAが考える)プロジェクトマネージャとしての行動様式・マインドに沿った回答を作る必要があるからです。
このレベルの人はIPAの高度試験のうち論述試験の区分を合格しているので、午後Ⅰ記述の解法や、午後Ⅱ論述の論文の書き方はマスターできています。残りのやることはただ一つです。PMBOKの知識領域に特化した問題に対応しつつ、その上でプロジェクトの悪化兆候の把握や定量的なモニタリングなど、プロジェクトマネージャとしての思考パターンを体得する必要があります。
壁にぶつかる例として、問題を1つ紹介します。
この問題ではコミュニケーション管理やコンフリクト対策について述べる必要があります。具体的にはPMBOK準拠のコミュニケーションのあるべき像や、プロジェクトマネージャが「コミュニケーションに問題がありそう」と早期に掴むための仕組み作りを回答に盛り込みます。
加えて、この問題の設問イ・ウでは、悪化したコミュニケーションの改善策が問われました。プロジェクト期間中のコミュニケーション悪化を定量的表現にするのはなかなか難しいのですが(コミュニケーションの定量化って・・・?)、こういった定量化が難しい指標の設定は頻出であり、プロジェクトマネージャ試験の特徴となっています。
レベル3の人に参考書をオススメする理由は?
①情報処理教科書 プロジェクトマネージャ
- プロジェクトマネージャ試験必携の本。どんなレベルの人も必ず買うべき
- 詳細な理由はこちらの記事をご覧ください
まとめ
受験者のレベルを問わず、必須の参考書はみよちゃん本ですが、加えて
- レベル1の人は三次先生の午後Ⅰ特化対策本・午後Ⅱ特化対策本があると良
- レベル2の人は三次先生の午後Ⅱ特化対策本があると良
- (レベル3の人はみよちゃん本以外は不要)
というところです。まずは良い参考書を買うところがスタートラインです!ぜひ買ってください!!
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