プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅱ論文の「論述の対象となるプロジェクトの概要」の15項目を徹底解説。記載の考え方をお伝えします。

「論述の対象となるプロジェクトの概要」 午後Ⅱ論文パーツ集
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 この記事では、プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅱ論文試験で記入を求められる15項目を解説のうえ、「論述の対象となるプロジェクトの概要」を作る際の考え方を公開します。

 公開する理由は、午後Ⅱ論文の「論述の対象となるプロジェクトの概要」が受験生を悩ませているためです。特に、「内容について、どの程度のプロジェクト規模を書く必要があるか」とか「具体性について、どの程度の細かさが求められるか」とか「やってはいけないNGポイントはなにか」とかです。これらに悩んだ結果、論文対策そのものにかける時間が減ってしまっては目も当てられません。

アママネくん

アママネくん

午後Ⅱ論文の「論述の対象となるプロジェクトの概要」に書くべき内容を考えるのが難しい・・・。どういう設定にしておけば合格レベルになるのかがわからない

 この問題は、意外と悩ましいですよね。なぜかというと、「こうすれば正解」というようなガイドがほぼないためです(みよちゃん本には書いてあります。買ってない人は買いましょう)。かと言って、1分1秒を争う試験当日に、論文を書いた後に内容を踏まえて考えて記入するなんて不可能です。論文と同じく、準備無しでは合格の確率は極低です。最悪、書き忘れで提出なんてこともあり得ます。

 そこで、「論述の対象となるプロジェクトの概要」を作る際の考え方を公開します。使えそうなところがあったら、ぜひパクってみてください!

この記事はこんな人にオススメ
  • プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅱ論文において、「論述の対象となるプロジェクトの概要」の書き方を知りたい人
  • プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅱ論文において、「設問ア」のネタ・記入例を探している人
  • プロジェクトマネージャの実務経験なしだけど、プロジェクトマネージャー試験を受験する人

「論述の対象となるプロジェクトの概要」とはなにか

 読んでそのままですが、「論述の対象となるプロジェクトの概要」とは、午後Ⅱ論文試験で回答用紙に記載するプロジェクトの概要です。下の画像の通り、①~⑮までの15項目を埋める必要があります。

 「論述の対象となるプロジェクトの概要」を記入する時間は、午後Ⅱ論文の試験時間の120分に含まれています。従って、120分で論文を書きつつ「論述の対象となるプロジェクトの概要」を埋める必要があります。

論述の対象とするプロジェクトの概要

なぜ「論述の対象となるプロジェクトの概要」を書く必要があるの?

 「プロジェクトのことは、わざわざ別途書かなくても論文に書いているだろう。なぜこんなものを書かせるの?」という疑問が湧くと思います。この理由は、採点する側の効率化のためであると言われています。

 効率化というのは、具体的には以下の2つです。

  1. 足切り。採点者は「論述の対象となるプロジェクトの概要」を論文を読む前に見る。見た上で、読むに値しない受験者を不合格にする。本文を読む前に足切りをすることで、採点を効率化できる。
  2. 内容把握。採点者は、論文を読む前に「論述の対象となるプロジェクトの概要」を見ることで、論文の設定を把握する。設定を回答用紙から読み取る手間を省くことで、採点を効率化できる。

 採点する側から見て、1による足切りの効果についてはわかりやすいですね。回答論文を読むまでもなく不合格な受験者が20%含まれているとしたら、足切りするだけで採点時間が20%削減できます。例えば、⑭で「プロジェクトマネージャの経験はないが、経験したとしたらのつもりで書きました」なんて記入してあったら即不合格らしいです(みよちゃん本のコラムより引用)。

 2は採点する側をやると必要性がよくわかります。皆さん頑張って書いてくれるのですが、合格レベルの人でも「字が汚い」「日本語が上手でない(一文がやたら長いとか)」「何のプロジェクトかわかりにくい」「設定(工数や期間や費用)がわかりにくい」なんてことはザラです。内容によっては、採点する時間の外に、採点の30%くらいの時間を使って「そもそもどんなプロジェクトなのか理解する」作業が要ります。

 重要なのは、「回答論文と論述の対象となるプロジェクトの概要に明らかな矛盾があれば減点されう得る、という点です。従って、対策はしておくべきところです。

  • ちなみに、採点していて明らかな矛盾が見つかった場合、「どっちの情報が正しいの?」というように回答論文を読み取る必要が生じます。この時点でBやCを付けたくなります。

「論述の対象となるプロジェクトの概要」を書く際の注意点

「プロジェクトの概要」を記述する際の注意点は以下の3つです。

  1. 論述するプロジェクトとの矛盾がないこと
  2. 不適切な数値を記入しないこと
  3. 全て埋めること

 これらの注意点はIPAの「採点講評」でも指摘されています。

 重要なのは、内容に矛盾や明らかな異常がないことです。一方で、数値の大小についてはあまりこだわらなくて大丈夫です。例えば、工数は10人月と書いても100人月と書いても良いのですが、100人月と書いておいて金額が100万円しかかかっていないとか、回答の論文で「今回記述するプロジェクトは10人月で、、、」というように明らかに矛盾する内容を書いてしまうとか、そういった不整合に気を付ければ良いです。

 なお、試験では選択肢として「分からない」という回答項目が用意されていますが、この項目はワナです。チェックを付けない方が良いです。この理由は、「プロジェクトマネージャとして必須の情報を把握できていない」という評価を受ける可能性があり、減点や不合格の原因となるからです。

「論述の対象となるプロジェクトの概要」における15項目それぞれのポイント

①プロジェクトの名称

 プロジェクトの名称は、回答用紙に記載されているように「わかりやすく簡潔に」書くことが求められます。漢字やカタカナ後、略称の使用は控えめにし、採点者が一読で内容を把握できるようにしましょう。

②企業・機関等の種類・業種 と ④対象業務の領域

 企業や機関の種類・業種は選択肢から選び、論文内容と一致させることが大切です。例えば、「食品メーカーの生産管理システム」を取り上げる場合、②企業・機関等の種類・業種で「製造業」に、④対象業務の領域で「生産・物流」にチェックを入れる、といった具体的な方法が挙げられます。

③企業・機関等の規模 と ⑤システムの形態と規模 と ⑦システムの利用者数 

 企業の規模や対象業務の領域、システムの形態と規模などについても、論文内容との整合性を保ちつつ、シート上の選択肢から適切に選ぶ必要があります。具体的には、企業規模「301人~1000人」、システムの形態として「クライアントサーバシステム」、ハードウェア数として「サーバ10台、クライアント500台」などが妥当です(「基本、これらを選択する」と決めておいても良いです)。

 ③企業・機関等の規模と ⑤システムの形態と規模と ⑦システムの利用者数はやや関連がありますので、整合性に注意してください。

⑥ネットワークの範囲

 ネットワークの範囲についても、自身の論文テーマに合わせて選ぶことが大切です。上記の例であれば「同一企業・同一機関などの複数事業所間」を選択するなど、システムの利用者数は企業の規模やシステムの形態との整合性を考慮して選択します。基本的に、「同一企業・同一機関などの複数事業所間」を選択する、と決めておいて良いと思います。

⑧総開発工数 と ⑨開発費総額 と ⑭あなたの管理対象人数

 総工数や費用総額に関しては、参考書やこのあたりの論文サンプルの例を参考にしながら、論文内容との整合性を保ちつつ、現実的な数値を設定しましょう。

 まず、⑭あなたの管理対象人数から考えると作りやすいです。人数がプロジェクトの途中で変動することも考慮して、幅を持たせましょう。最小と最大の幅が2倍くらいで良いです。例えば、20人~40人、というような書き方です。

 次に、⑧総開発工数を決めます。次項⑩開発期間と⑭あなたの管理対象人数の中央の値の掛け算で良いです。例えば、⑩開発期間が10ヶ月 × ⑭あなたの管理対象人数で20人~40人と書いたなら中央の値である30人を用います。10ヶ月 × 30人 = 300人月です。

 最後に、⑨開発費総額を決めます。⑧総開発工数と人月単価の掛け算で良いです。人月単価は100万円で良いです(計算しやすいので)。従って、総工数が300人月のプロジェクトの場合、「300百万円」という費用が妥当です。かつ、「ハードウェアを含まない」にチェックしておく、という感じです。

  • 人月単価や開発費総額や後述の開発期間は、実際のプロジェクトと同じである必要はありません。違っていても裏取りもされませんから問題ないです。合格できれば良いのです。
  • 人月単価100万円、開発費総額100百万円、開発期間10ヶ月、くらいが覚えやすくて良いです。

⑩開発期間

 開発期間は「○○年○月~○○年○月」の形式で記入します。

 例としては、2021年1月~2021年10月、というような期間です。年度は受験の3年くらい前、月は1月スタートにしておくで良いと思います。1月スタート・10月終了くらいのプロジェクトにしておくと、ストーリー作りや計算が楽です。4月スタートだと、「7ヶ月経過時点は何年何月だっけ。。。」と無駄に悩みやすいです。実際のプロジェクトと違っていても良いです。 

  • プロジェクトのリスクや問題等についてコロナ禍を記載するならば、2020年以降にしましょう。一般的に、コロナ禍は緊急事態宣言第一回の2020年4月から5類に移行した2023年5月までです。
  • 論文に書く開発期間が、コロナ禍の第何波だったかを書くと具体性が高まります。

⑪あなたが所属する企業・機関等

 自分の所属している企業や機関の詳細を選択で記述します。基本的に、「設問ア」で冒頭に書きます。矛盾しないようにしましょう。

⑫あなたが担当したフェーズあなたが所属する企業・機関等

 必ず、全てのフェーズを担当したと記述しましょう。

⑬あなたの役割

 必ず、「プロジェクトの全体責任者」を選択しましょう。

⑮あなたの担当期間

 ⑩開発期間と同じにします。プロジェクトマネージャなので、開発期間の最初から最後までいるよね、ということです。

まとめ

 このように、各項目での選択や記述は、論文の内容や実際の事業の背景をしっかりと考慮して設定を作ります。矛盾や不整合が生じないよう、全体の一貫性を保ちつつ、リアルなビジネスの現場を想定して情報を整理・提供することが、質の高い論文を書くための鍵となります。

 システム開発の未経験者でも、過去の記事「午後Ⅱ論文の「論述の対象となるプロジェクトの概要」や「設問ア」のためのプロジェクト設定集を公開します」などを参考にすれば、妥当なプロジェクトの概要を記述できるようになります。

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